食品科学科
准教授
血中脂質・コレステロールと動脈硬化の関係
これらのうち悪玉のLDLコレステロールが過剰になると動脈硬化の原因となり、狭心症・心筋梗塞・脳梗塞・大動脈瘤などを引き起こす。
脂質と紅茶の関係を考える
5つのポイント
血液中の脂質は、自覚しにくい。
血液中の脂質には、中性脂肪やコレステロールがあります。
中性脂肪は、重要なエネルギー源として、体温を一定に保つ役割を担っています。
コレステロールは、細胞膜の主要な構成成分で、性ホルモンや副腎皮質ホルモン、脂肪の消化吸収を促す胆汁の原料となります。
ところが現代の食生活において、これらの脂質は過度に摂取しがちです。
体内にたまっても気がつきにくく、初期症状や自覚症状がないまま、生活習慣病を引き起こしてしまいます。
現代人は脂質の過剰摂取にならないよう、日頃から食事に注意することが大切です。
紅茶は、血液中の脂質増加を抑えます。
紅茶だけに含まれる抗酸化性のポリフェノール成分「テアフラビン」は、さまざまな研究によって、消化管における脂質に対する影響力が明らかになってきました。
2015年には、世界的にメジャーな研究データベースをもとに、人を対象に、紅茶摂取と血中コレステロール濃度の関係を調べた研究論文についてメタアナリシスという手法で統計解析がなされました。
その結果、紅茶の摂取によって、LDL(悪玉)コレステロールと総コレステロールの数値が低下し、HDL(善玉)コレステロールの数値はそのままであったと報告されています。
紅茶のリパーゼ(脂肪分解酵素)阻害作用による、脂質吸収抑制効果
脂質はいわゆる脂(アブラ)で水となじまないため、消化吸収されるためには、十二指腸で胆汁(主にリン脂質+胆汁酸)によって乳化されることが条件です。
紅茶に含まれるテアフラビンがその乳化を妨げることは、リン脂質を使った実験で確認されています。
さらにテアフラビンは、脂質分解酵素である消化酵素リパーゼの働きも阻害します。
その結果、脂質の消化吸収を抑え、肥満防止につながると考えられます。
つまり、脂っこいものを食べるときに紅茶を一緒に飲むことで、脂肪の吸収を緩やかにすることが期待できます。
血液中の抗酸化性を高めるカテキンの効果。
血液中のコレステロールのうち、特に低密度リポタンパク質のLDLコレステロールは、酸化すると真の悪玉コレステロールと考えられる、「酸化LDL」となります。
この酸化LDLが、血管内膜に蓄積してゆく元になります。
その結果、動脈硬化となって、狭心症・心筋梗塞・脳梗塞・大動脈瘤などを引き起こします。
この悪玉コレステロールを抑えるポイントは、血液中の抗酸化性を高めること。
紅茶には、緑茶と同じカテキン類が微量含まれていますが、これは血液中に吸収され、血液中の抗酸化性を高めるという研究結果が報告されています。
「ケーキと紅茶」の理想的な組み合わせ。
脂っこいものだけでなく、ケーキに用いられる生クリームなどにもテアフラビンは作用します。
水と脂は、乳化されることで体内に消化されやすくなりますがテアフラビンはその乳化を阻害して、水と脂の分離を促進する働きがあるのです。
ケーキに紅茶がプラスされることで、乳化作用はぐんと低下、結果的にケーキ本来の味わいを引き立てつつ、すっきり、美味しくいただけるというわけです。
飲み方のコツ
&
注意とポイント!
自分の体質を知る
紅茶はやみくもに摂取すると、シュウ酸の過剰摂取につながるため、結石などが起きやすい体質には注意が必要です。牛乳などカルシウムを含むものと一緒に摂取すると、シュウ酸は吸収されにくいカルシウム塩になり予防されます。
紅茶の「水色」を意識
紅茶のポリフェノール「テアフラビン」は、紅茶特有の色素を構成するものです。紅茶の成分には、より含有量の多い主成分として「テアルビジン」というより深い赤みのポリフェノールがあり、それらの複雑な組成で紅茶の特徴が出てきています。おおまかな目安として、「水色」の明るく濃い赤みの紅茶の方が、テアフラビンやテアルビジンの含有量は多いと認識しておくことがポイントです。
きっと後味さっぱりの『油切れの良い』紅茶が見つかるはずです。